校正証明書の見方|測定の不確かさ・合否判定の読み方【受領側実務】
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校正証明書の見方|測定の不確かさ・合否判定の読み方【受領側実務】

2026年7月26日19分で読める

校正証明書には原則として合否は書かれておらず、記載された測定値・器差・拡張不確かさ(k=2)を自社の公差と照らして合否を判定するのは受領側の役割です。校正を外部に依頼した品質保証部門の担当者が、届いた証明書を前に「この欄は何を意味するのか」「この機器を使ってよいのか」で手が止まる場面は少なくありません。

本記事は、校正証明書を受け取った側の視点で、各欄の意味・測定の不確かさ(拡張不確かさ・k=2)の読み方・証明書に合否が載らない理由を、証明書を手にした担当者の言葉に翻訳して整理します。学術的な数式ではなく、届いた証明書のどこを見て何を確認すればよいかに絞ります。

校正証明書の各欄の見方(受領側の確認ポイント)

校正証明書は、その機器がどの標準に照らして、どのような条件で、どれだけの器差と不確かさを持っていたかを客観的に記録した文書です。受領側がまず押さえるのは、記載された各欄が「機器の状態」を示すのか「校正の条件」を示すのかの区別です。

記載される主な項目(標準器・環境条件・測定値と器差・拡張不確かさ・トレーサビリティ)

一般的な校正証明書には、対象機器の識別(管理番号・型式)、使用した標準器の情報、校正時の環境条件(温湿度)、各測定点の測定値と器差、拡張不確かさ、トレーサビリティの表明が記載されます。ここでいう器差は、計測器の指示値と真の値(参照値)との差で、JIS Z 8103:2019は器差を「指示値から真値を引いた値」と定義しています(真値の代用として参照値を用いる/番号707)。

これらの欄は役割が二つに分かれます。標準器情報・環境条件・トレーサビリティは「校正がどれだけ信頼できる条件で行われたか」を示す欄、測定値・器差・拡張不確かさは「機器が実際どうだったか」を示す欄です。受領側は後者で機器の状態を読み、前者でその結果の信頼性を確認します。

校正証明書の主要欄が「校正条件を示す欄」と「機器の状態を示す欄」に分かれることを示した図解
校正証明書の主要欄が「校正条件を示す欄」と「機器の状態を示す欄」に分かれることを示した図解

各欄の読み方早見表

受領側がどの欄で何を確認すればよいかを、下表に整理しました。これは校正証明書を受け取った品質保証部門が、機器の可否判断に必要な最小限の確認ポイントをまとめた早見表です。

記載される内容受領側の確認ポイント
対象機器の識別管理番号・型式・製造番号自社の計測器台帳の管理番号と一致するか
標準器情報校正に使った標準器・その証明書番号上位標準へトレーサブルか
環境条件校正時の温度・湿度自社の使用環境と大きく離れていないか
測定値と器差各測定点の指示値・器差器差が自社の公差の範囲内か
拡張不確かさk=2の拡張不確かさ公差に対して不確かさが十分小さいか
トレーサビリティ国家標準への連鎖の表明表明の有無・JCSS標章の有無

器差だけを見て「小さいから合格」と早合点せず、拡張不確かさと自社の公差をセットで確認するのが受領側の実務です。器差が公差内でも、不確かさが大きいと判定の信頼性が下がるためです。受領後の保管・命名規則・台帳ひも付けの手順は校正証明書の管理・電子化で整理しています。

測定の不確かさの読み方(拡張不確かさ・k=2)

校正証明書で受領側が最も戸惑うのが「拡張不確かさ(k=2)」の欄です。これは機器の誤差そのものではなく、測定結果がどれだけの幅を持つかを示す指標であり、器差とは意味が異なります。

拡張不確かさとk=2が示す信頼の区間

拡張不確かさは、測定結果について、測定対象量の値の分布の大部分を含むと期待する区間を定める不確かさです(JIS Z 8103:2019 番号534)。合成標準不確かさに包含係数kを掛けて求め、k=2 が最も一般的です(拡張不確かさ=包含係数×合成標準不確かさ/同 番号535・包含係数は通常2〜3の値をとる)。

k=2 は、測定結果を中心にプラスマイナス拡張不確かさの幅を取ると、その区間に真の値が含まれることを約95%の信頼の水準で期待できることを意味します(産総研NMIJ「標準不確かさと拡張不確かさ・信頼の水準約95%」)。JCSS校正証明書でも「包含係数k=2」による拡張不確かさの表示が標準的に用いられます。

拡張不確かさとk=2が測定結果まわりに約95%の信頼の区間を作ることを示した図解
拡張不確かさとk=2が測定結果まわりに約95%の信頼の区間を作ることを示した図解

不確かさは「誤差」ではない(器差との違い)

受領側がつまずきやすいのが、不確かさと器差(誤差)の混同です。器差は指示値と真の値(参照値)との差という「一つの値」であるのに対し、不確かさはその測定結果に伴うばらつきの「幅」を特徴づけるパラメータです(JIS Z 8103:2019 番号707/526)。

重要なのは、器差を補正しても不確かさは残るという点です。器差が判明すれば指示値を補正できますが、その補正後の値にも標準器や環境に由来する不確かさが必ず伴います。つまり「器差ゼロ=完全に正確」ではなく、不確かさの幅の中で結果を扱う必要があります。校正と検証・調整の区別(JISは検証と校正を混同すべきでないとする/番号406)は校正・検証・調整の違いで整理しています。

器差は一つの差の値、不確かさは結果に伴うばらつきの幅であることを対比した図解
器差は一つの差の値、不確かさは結果に伴うばらつきの幅であることを対比した図解

校正証明書に「合否」がない理由

校正証明書を見て「合格・不合格が書いていない」と戸惑う担当者は多いですが、これは不備ではなく校正という行為の性質によるものです。合否がないことには、受領側が主体的に判断する前提が表れています。

校正は結果報告、合否判定は使用者が公差と比較して行う

校正は、測定標準が提供する値と機器の指示値との関係を確立する操作であり、その結果(測定値・器差・不確かさ)を報告するところまでが本来の範囲です(JIS Z 8103:2019 番号401)。「その機器を使ってよいか」の合否は、合否は使用者が公差と比較して判定する領域で、校正機関の役割とは分かれています。

適合性の表明(合否の判定)は、依頼者と校正機関が判定ルールを合意し文書化した場合に行われます(ISO/IEC 17025:2017 7.1.3・ILAC-G8:09/2019)。したがって合否は「原則として載らない」ものであり、依頼時に判定を求めれば判定付きの成績書が付く場合もあります。証明書に合否がないことは、受領側が公差に基づいて機器の可否を決める前提を示しています。

校正機関は結果を報告し、使用者が自社公差と照らして合否を判定する役割分担を示したフロー図
校正機関は結果を報告し、使用者が自社公差と照らして合否を判定する役割分担を示したフロー図

公差と不確かさの関係(TUR・判定リスク・ガードバンド)

合否を判断するとき、器差が公差の内側にあっても不確かさの幅が公差ぎりぎりに及ぶと、誤って合格と判定するリスクが残ります。この判定の信頼性を測る指標がTUR(Test Uncertainty Ratio)で、公差を拡張不確かさ(95%)で割った比として定義されます(ILAC-G8:09/2019)。

公差が拡張不確かさの4倍以上、すなわちTURが4:1以上なら不確かさが公差に対して十分小さく、単純な合否判定でも許容されやすいとされます(ILAC-G8:09/2019)。TURが小さい場合は、不確かさの分だけ合格域を狭めるガードバンドを設けて誤判定リスクを抑えます。受領側は器差だけでなく、この公差と不確かさの比まで見て可否を決めるのが実務です。

状況器差と公差・不確かさの関係受領側の判断
TUR 4:1以上不確かさが公差より十分小さい器差が公差内なら合格と扱いやすい
TUR が小さい不確かさが公差に対して大きいガードバンドで合格域を狭めて判定
器差が公差の近傍不確かさの幅が公差線をまたぐ誤判定リスクあり・再校正や上位機器を検討
公差と拡張不確かさの比(TUR)とガードバンドで合格域を狭める考え方を示した関係図
公差と拡張不確かさの比(TUR)とガードバンドで合格域を狭める考え方を示した関係図

まとめ

校正証明書には原則として合否は書かれておらず、測定値・器差・拡張不確かさ(k=2)を自社の公差と照らして機器の可否を判断するのは受領側の役割です。各欄は「校正の条件を示す欄」と「機器の状態を示す欄」に分けて読み、器差だけでなく拡張不確かさと公差の比(TUR)まで確認します。不確かさは誤差ではなくばらつきの幅で、器差を補正しても残る点に注意してください。合否判定を校正機関に求める場合は、判定ルールを合意したうえで依頼します。読み終えた証明書は台帳にひも付けて保管し、次回校正日の管理につなげます。

よくある質問

Q. 校正証明書に合格・不合格は書いてありますか?

原則として書かれません。校正は測定結果(測定値・器差・不確かさ)の報告で、合否は使用者が自社の公差と比較して判定します(判定ルールの考え方: ISO/IEC 17025:2017 7.1.3・ILAC-G8:09/2019)。ただし依頼時に判定を求めると、判定付きの成績書が付く場合もあります。

Q. 拡張不確かさ(k=2)とは何ですか?

測定結果が含まれると期待される区間の幅を、約95%の信頼の水準で示したものです。k=2は包含係数で、合成標準不確かさを約2倍して求めます(出典: JIS Z 8103:2019 番号534/535/産総研NMIJ)。

Q. 器差と不確かさはどう違いますか?

器差は指示値と真の値(参照値)との差という一つの値、不確かさはその測定結果に伴うばらつきの幅です。器差を補正しても不確かさは残ります(出典: JIS Z 8103:2019 番号707/526)。

Q. 公差と不確かさはどう使い分けますか?

合否は器差を自社の公差と比較して判定し、不確かさは判定の信頼性に関わります。公差を拡張不確かさで割ったTURが4:1以上なら不確かさが十分小さく、小さい場合はガードバンドで合格域を狭めます(考え方: ILAC-G8:09/2019)。

出典

計測器校正HUBは、外部の校正機関から届いた校正証明書をPDFで機器レコードにひも付けて保管し、器差・拡張不確かさの記録や次回校正日を計測器台帳で一元管理できるツールです。校正作業そのものは校正業者やJCSS登録事業者へ依頼する前提で、本サービスは記録と期限の管理を担います。料金・機能の詳細や無料での製品体験については、お問い合わせからご案内しています。

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