
校正不備の是正処置報告書の書き方|なぜなぜ分析と再発防止のテンプレ【2026年版】
校正不備の是正処置報告書は、事象・影響範囲の特定・応急処置(修正)・根本原因(なぜなぜ分析)・是正処置・水平展開・有効性確認の7項目を、ISO9001:2015の10.2「不適合及び是正処置」のプロセスに沿って埋めるのが正しい書き方です。校正の期限切れ機器を使っていた、校正で規格外の読み値が出た、校正記録が抜けていた——こうした不備は、報告書に「担当者が確認を怠った」とだけ書いて終わりにすると、原因が仕組みに残ったまま再発します。
本記事は、汎用の是正処置報告書ではなく、校正不備に固有の記載例に絞って様式を解説します。7項目の記載テンプレ、修正と是正処置の違い、校正版のなぜなぜ分析(期限管理の属人化・台帳分散という仕組みの欠陥まで掘る手順)、そして遡及影響評価との連動までを、ISO9001の要求と対応づけて自己完結でまとめます。校正作業そのものは校正業者やJCSS登録事業者へ依頼する前提で、本記事は発注側の品質保証部門が「記録として何を残すか」に軸足を置きます。
校正不備の是正処置報告書とは
校正不備の是正処置報告書は、計測器の校正に関わる不適合が起きたときに、原因の除去と再発防止までを記録として残す様式です。ISO9001:2015は10.2「不適合及び是正処置」で、不適合への対処・原因除去の評価・とった処置の有効性レビュー・結果の文書化を求めており(出典: JIS Q 9001:2015 10.2)、報告書はこの要求を1枚で満たすための道具になります。

是正処置報告書の役割(ISO9001 10.2との対応)
ISO9001:2015 10.2は、不適合が起きたら(1)その不適合を管理し修正する処置をとり、(2)原因を除去する是正処置の必要性を評価し、(3)とった是正処置の有効性をレビューし、(4)不適合の性質・とった処置・結果を文書化することを求めます(出典: JIS Q 9001:2015 10.2)。是正処置報告書は、この一連のプロセスを時系列で追える形に落とした記録です。
校正の文脈では、期限切れ機器の使用・規格外読み値・記録漏れといった不備がこの不適合にあたります。報告書がないと、口頭で直して終わり、原因が残ったまま同じ不備が別の機器で再発する、という状態になりがちです。
修正(応急処置)と是正処置(原因除去)の違い
報告書でまず崩してはいけないのが、修正と是正処置の区別です。ここで修正は「検出された不適合を除去するための処置」で、隔離・再校正・再測定といった目の前の不適合を取り除く応急処置を指します(出典: JIS Q 9000:2015 3.12.3)。
一方で是正処置は「不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置」で、応急処置とは別に原因まで断つ対策です(出典: JIS Q 9000:2015 3.12.2)。「再校正したから解決」で報告書を閉じると、修正だけで是正処置が抜けた状態になり、ISO9001 10.2が求める原因除去に届きません。両者を別欄で書き分けるのが基本です。
是正処置報告書の記載項目(様式テンプレ)
校正不備の是正処置報告書は、次の7項目をそろえるとISO9001 10.2のプロセスと過不足なく対応します。下表は、計測器校正HUBの校正履歴・期限アラート・台帳一元化の運用設計をもとに作成した記載項目テンプレと、期限切れ機器の使用を例にした記入例です。

| 記載項目 | 書く内容 | 校正不備での記入例 |
|---|---|---|
| 1. 事象 | いつ・どの機器で・何を測っていたか、不備の内容 | 管理番号M-102のノギスが校正期限を3か月超過して使用されていた |
| 2. 影響範囲の特定 | 対象期間・対象製品/工程・出荷済みの有無 | 期限超過期間に測定した部品ロット3件、うち1件は出荷済み |
| 3. 応急処置(修正) | 不適合の除去(隔離・再校正・再測定) | 該当ノギスを隔離し再校正、期間内ロットを再測定 |
| 4. 根本原因 | なぜ起きたか・なぜ気づけなかったか(なぜなぜ分析) | 期限管理がExcel台帳で属人化し、担当者不在時に確認が抜けた |
| 5. 是正処置 | 原因を除去する恒久対策 | 期限を自動通知する仕組みへ移行し、通知先を複数担当に設定 |
| 6. 水平展開 | 類似機器・他部門への展開 | 同型機と他の測定器の期限管理方法を横展開で点検 |
| 7. 有効性確認 | 対策後の再発有無をレビューした結果 | 3か月後に期限超過ゼロを確認し有効と判定 |
事象と影響範囲の特定(いつ・どの機器・何を測ったか)
事象欄は、発生日・管理番号・機器名・測定していた対象を具体的に書きます。「校正がおかしかった」ではなく、「いつからいつまで・どの機器で・どの工程や製品を測っていたか」を特定できる粒度が必要です。
影響範囲の特定は校正不備で最も重い工程です。校正で機器が規格外と判明した場合、ISO9001:2015 7.1.5.2は、それまでに得た測定結果の妥当性への悪影響を判断し必要な処置をとることを求めます(出典: JIS Q 9001:2015 7.1.5.2)。前回の合格校正までさかのぼって対象ロット・出荷済み品まで洗い出す遡及影響評価を、この欄で記録します。残す記録項目はISO9001 7.1.5で必要な記録と台帳項目で整理しています。
応急処置(修正)と根本原因(なぜなぜ分析)
応急処置欄には、不適合機器の隔離・再校正・影響ロットの再測定など、いま起きている不適合を取り除く修正を書きます。ここは早さが要で、規格外品の流出を止めることが目的です。

根本原因欄は、なぜその不備が起きたかをなぜなぜ分析で掘った結果を書きます。「担当者が期限を見落とした」で止めず、なぜ見落とせる状態だったのかという仕組みの側の原因まで到達させます。この掘り下げが次の是正処置の質を決めます。
是正処置・水平展開・有効性確認
是正処置欄には、根本原因を除去する恒久対策を書きます。原因が「期限管理の属人化」なら、対策は担当者への注意喚起ではなく、期限を一元管理して自動で通知する仕組みへの置き換えです。
水平展開は、同じ原因を持つ他の機器や他部門へ対策を広げる欄です。有効性確認は、ISO9001 10.2が求める是正処置の有効性レビューにあたり(出典: JIS Q 9001:2015 10.2)、対策後の一定期間に不備が再発していないかを確認して記録します。ここまで書いて、報告書は初めて閉じられます。
校正不備のなぜなぜ分析の進め方
校正不備のなぜなぜ分析は、汎用テンプレの丸写しでは効きません。校正固有の「なぜ気づけなかったか」を、期限管理や台帳運用の仕組みまで掘り下げるのが差別化の核です。
校正不備に固有の掘り下げ例(期限管理の属人化・台帳分散)
期限切れ機器を使っていた事例を、なぜなぜで掘ると次のようになります。

事象: 校正期限切れのノギスを使用していた なぜ1: 期限が切れたことに現場で気づかなかった なぜ2: 期限はExcel台帳にあり、開いて確認しないと分からなかった なぜ3: 期限の通知が担当者個人のリマインダー頼みだった なぜ4: 担当者が1名に集中し、不在時の代替がなかった 根本原因: 期限管理が属人化し台帳が分散していた(個人のミスではなく仕組みの欠陥)
このように掘ると、対策は「注意する」ではなく「期限を一元台帳で管理し、複数担当へ自動通知する」という仕組みの改善に着地します。期限切れ機器そのものへの対応は校正期限切れの計測器が見つかったときの対応も参考にしてください。
個人要因で止めず仕組みの欠陥まで掘る
なぜなぜ分析でよくある失敗は、「担当者の確認不足」「教育不足」で止めてしまうことです。個人要因で止めると、是正処置が「注意喚起」「再教育」に流れ、同じ不備が別の人や別の機器で再発します。
ISO9001 10.2が求めるのは原因の除去です(出典: JIS Q 9001:2015 10.2)。人は入れ替わっても仕組みは残るため、「その人がいなくても不備が起きない状態」まで掘り下げることが再発防止の分かれ目になります。校正記録の不備がどんな類型で起きるかは校正記録の不備事例と監査指摘の逆引きで整理しています。
是正処置報告書でよくある失敗と注意点
校正不備の是正処置報告書でつまずきやすい点は、下図の3つに集約されます。いずれも「修正で止まる」「原因が浅い」「確認しない」という共通構造を持ちます。

修正と是正処置の混同、なぜなぜの浅掘り、有効性確認の未実施が典型で、これらはISO9001 10.2が求める要素の欠落として審査でも指摘されやすい点です(出典: JIS Q 9001:2015 10.2)。校正作業自体は校正業者やJCSS登録事業者に委ね、報告書と記録の一元管理を仕組みで支えると、これらの失敗は防ぎやすくなります。
まとめ
校正不備の是正処置報告書は、事象・影響範囲の特定・応急処置(修正)・根本原因(なぜなぜ分析)・是正処置・水平展開・有効性確認の7項目で構成し、ISO9001:2015 10.2の是正処置プロセスに対応させるのが要点です。修正(応急処置)と是正処置(原因除去)を分けて書き、規格外読み値が出たときは7.1.5.2の遡及影響評価まで連動させます。なぜなぜ分析は個人要因で止めず、期限管理の属人化・台帳分散という仕組みの欠陥まで掘ることが再発防止の起点になります。
よくある質問
Q. 校正不備の是正処置報告書には何を書きますか?
事象・影響範囲の特定・応急処置(修正)・根本原因(なぜなぜ分析)・是正処置・水平展開・有効性確認の7項目を書きます。ISO9001:2015 10.2の是正処置プロセスに対応する構成です(出典: JIS Q 9001:2015 10.2)。
Q. 修正と是正処置はどう違いますか?
修正は検出された不適合を除去する応急処置(隔離・再校正など)、是正処置は不適合の原因を除去し再発を防止する対策です(出典: JIS Q 9000:2015 3.12.2/3.12.3)。ISO9001 10.2は原因の除去まで求めるため、両者を分けて記載します。
Q. 校正不備のなぜなぜ分析はどう進めますか?
「担当者がミスした」で止めず、なぜ気づけなかったか=仕組みの欠陥まで掘ります。校正では「期限管理が属人化」「台帳がExcelで分散」などの仕組み要因に到達させるのが再発防止の起点です。
Q. 期限切れ機器を使っていた場合の是正は?
該当機器を隔離・再校正し、期限超過期間の測定結果を遡及影響評価で確認します(ISO9001:2015 7.1.5.2)。規格外なら製品への影響・出荷済み品まで追い、恒久策として期限の自動通知など仕組みを整えます(出典: JIS Q 9001:2015 7.1.5.2)。
出典
- ISO 9001:2015 7.1.5.2/10.2(測定のトレーサビリティ・不適合及び是正処置): https://www.iso.org/standard/62085.html
- JIS Q 9001:2015 10.2(不適合及び是正処置・条文の日本語確認): https://kikakurui.com/q/Q9001-2015-01.html
- JIS Q 9000:2015 3.12.2/3.12.3(是正処置・修正の定義): https://kikakurui.com/q/Q9000-2015-01.html
- JIS Z 8103:2019(計測用語・校正/検証/調整の定義): https://kikakurui.com/z8/Z8103-2019-01.html
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