
温度計・温湿度計の校正管理|周期の決め方と日常点検のポイント【2026年版】
温度計・温湿度計の校正管理は、経時ドリフトが出やすい機器であることを前提に、使用環境と品質への影響度に応じて校正周期を短めに設定し、使用する温度域を複数点で確認するのが基本です。長さ測定器のように狂いにくい機器と同じ感覚で「年1回」に固定すると、気づかないうちに指示値がずれ、工程の温度管理そのものが信頼できなくなります。
本記事は、製造業の品質保証・品質管理部門で温度計・温湿度計を管理する担当者に向けて、ドリフトを前提にした校正周期の考え方、品質への影響度で分ける用途別の管理ランク、日常点検のチェック項目を整理します。校正作業そのものは校正事業者やJCSS登録事業者に依頼する前提で、記録・台帳・期限の管理をどう設計するかに絞って解説します。
温度計・温湿度計の校正管理とは(ドリフトを前提にした管理)
温度計・温湿度計の校正管理とは、指示値が経時的にずれていく前提で、狂いを早期に検知できるよう周期・点検・記録を設計することです。ISO9001:2015の7.1.5.2は、測定機器を「定められた間隔で、又は使用前に」校正もしくは検証し、その証拠を記録として残すことを求めています(出典:ISO 9001:2015 7.1.5.2)。温度計はこの「定められた間隔」を、機器の狂いやすさに合わせて短めに考える対象です。
温度計・温湿度計が狂いやすい理由(経時ドリフト・熱衝撃・使用環境)

温度計・温湿度計は、ノギスやマイクロメータのような長さ測定器に比べて指示値が変動しやすい機器です。主な要因は、センサ素子が時間とともに特性を変える経時ドリフト、急激な温度差にさらされる熱衝撃、そして高温・多湿・振動といった使用環境の影響です。
特に温湿度計の湿度センサは、汚れ・結露・化学物質への曝露で特性が変わりやすく、温度側より劣化が早いことがあります。こうした要因は外観からは判断しにくいため、「見た目が正常だから問題ない」と考えず、定期的な校正と点検で確認する必要があります。
早見表|対象機器と管理のポイント(データロガー・恒温槽監視を含む)
温度・湿度を測る機器は、手持ちの温度計だけではありません。工程監視に使うデータロガーや、恒温槽・冷蔵保管庫に取り付けられた温度センサも、測定結果が品質判断に関わるなら管理対象です。下表は代表的な対象機器と管理上のポイントを整理した早見表です。

| 対象機器 | 主な用途 | 管理上のポイント |
|---|---|---|
| デジタル温度計・接触式温度計 | 工程・受入時の温度測定 | 使用温度域での複数点確認・センサ外観 |
| 温湿度計・データロガー | 保管環境・工程環境の記録監視 | 湿度センサの劣化・記録の連続性 |
| 恒温槽・恒温恒湿槽の内蔵計 | 試験・エージングの温度制御 | 庫内の温度分布・設定値との差 |
| 放射温度計(非接触式) | 近づけない対象の表面温度 | 放射率設定・測定距離の条件 |
いずれも、校正証明書・次回校正日・点検記録を機器ごとにひも付けて管理すると、期限切れや記録の抜けを防げます。
校正周期の決め方(ドリフト前提で短めに考える)
温度計・温湿度計の校正周期は、規格が一律に「○年ごと」と決めるものではありません。ISO9001:2015 7.1.5.2は「定められた間隔で、又は使用前に」とするのみで、具体的な年数は示していません(出典:ISO 9001:2015 7.1.5.2)。間隔は、使用頻度・要求精度・使用環境・過去の校正結果といったリスクをもとに組織が決め、その根拠を残します。周期決定の一般的なフレームは校正周期の決め方で整理しています。
使用環境・重要度で周期を短縮する考え方

温度計は狂いやすい機器のため、汎用の周期をそのまま当てはめず、使用環境と重要度で短縮を検討します。高温・多湿・振動のある環境で常用する機器や、製品の合否に直結する測定に使う機器ほど、間隔を短くし点検頻度を上げるのが実務的です。
一方で、過去の校正結果が安定して基準内に収まっている機器は、根拠を記録したうえで間隔の延長を検討できます。校正間隔の決定と見直しの国際的な考え方は、OIML D10:2022やILAC-G24に整理されています(出典:OIML D10:2022)。周期は固定ではなく、実績で見直す前提で運用するのが要点です。
複数点校正(使用温度域をカバーする)の考え方

温度計の精度は、測る温度によって変わることがあります。0℃付近だけを確認しても、実際に使う100℃付近の誤差までは分かりません。そこで、実際に測定する温度域をカバーする複数の点で確認する「複数点校正」の考え方が重要になります。
JIS Z 8710:1993「温度測定方法通則」は、温度計の使用範囲や校正方法を含めて温度測定の一般的方法を規定しています(出典:JIS Z 8710:1993)。何点で確認するかは使用温度域と要求精度で決まり、校正の実施そのものは校正事業者やJCSS登録事業者に依頼します。発注時に「使用する温度域のどの点で確認したいか」を伝えると、証明書に必要な点が記録されます。
用途別の管理ランク付け(監視用途の重要度)
温度計・温湿度計をすべて同じ周期・同じ点検頻度で管理すると、重要な機器の抜けと、重要でない機器の過剰管理が同時に起きます。品質への影響度で機器を数ランクに分け、ランクごとに周期と点検頻度を割り付けると、限られた工数を重要な機器に集中できます。
管理ランクの決め方(品質への影響度で分ける)
管理ランクは、その測定値が品質判断や出荷可否にどれだけ直結するかで決めます。下表は、品質への影響度と監視用途を組み合わせて3ランクに分けた早見表の例です(計測器校正HUBの管理設計として作成)。

| 管理ランク | 想定用途の例 | 校正周期の目安 | 日常点検の頻度 |
|---|---|---|---|
| A(品質直結) | 合否判定・出荷可否に使う測定 | 短め(実績で見直し) | 使用前または高頻度 |
| B(工程監視) | 恒温槽・保管環境の監視記録 | 中程度 | 定期的 |
| C(参考・補助) | 目安確認・補助的な測定 | 長め(実績で判断) | 低頻度 |
周期の「目安」は年数ではなく相対的な短長で示しています。実際の間隔は使用環境と過去の校正結果で決め、その根拠を台帳や手順書に残します。
監視用途(恒温槽・保管環境モニタリング)の扱い
恒温槽や冷蔵・冷凍保管庫のように、機器そのものではなく「環境」を監視する温度計・データロガーも、記録が品質の根拠になるなら管理対象です。監視用途では、単体の校正だけでなく、庫内で温度が場所によってばらつく点にも注意します。
こうした監視機器は、記録が連続してとれているか、設定値と実測値の差が想定内かを日常的に確認します。校正証明書・次回校正日・点検記録を機器ごとに一元管理しておくと、監査で「この環境データはどの校正済み機器で取ったか」を即座に示せます。期限や記録の抜けを防ぐ台帳運用は校正期限・周期の管理も参考になります。
機器別の日常点検項目(自主点検チェックリスト)
校正と校正の間の期間も、機器が正常かを日常点検で確認すると、狂いや故障を早期に発見できます。日常点検は校正の代わりにはなりませんが、次の校正を待たずに異常の兆候をつかむための実務的な手段です。
点検項目テンプレ(既知温度での確認・表示・電池・センサ外観)
日常点検は、専門設備がなくても現場でできる範囲に絞ると続けやすくなります。下表は温度計・温湿度計の点検項目テンプレの例です(計測器校正HUBの点検様式として作成)。

| 点検項目 | 確認内容 | 目安の頻度 |
|---|---|---|
| 既知温度での確認 | 氷点付近など安定した温度で表示のずれを確認 | 使用前・定期 |
| 表示・動作 | 表示欠け・エラー・反応の遅れがないか | 使用前 |
| 電池・電源 | 電池残量・電源の安定 | 使用前 |
| センサ・外観 | センサの汚れ・破損・ケーブルの傷 | 定期 |
| 記録機能 | データロガーの記録が連続してとれているか | 定期 |
点検で異常が見つかったら、使用を止めて校正・修理に回し、その判断と処置を記録に残します。点検はあくまで異常検知が目的で、合否の判定や精度の確認は校正事業者による校正で行います。長さ測定器の点検の考え方はノギス・マイクロメータの校正管理と対比すると整理しやすくなります。
まとめ
温度計・温湿度計は経時ドリフトで狂いやすい機器のため、汎用の周期をそのまま当てはめず、使用環境と品質への影響度に応じて短めに設定し、使用温度域を複数点で確認するのが要点です。品質への影響度で管理ランクを分け、ランクごとに周期と点検頻度を割り付けると、重要な機器の抜けを防げます。校正作業そのものは校正事業者やJCSS登録事業者に依頼し、記録・台帳・期限の管理を仕組みで支えるという役割分担で、温度計・温湿度計の管理は安定します。
よくある質問
Q. 温度計の校正周期はどのくらいが目安ですか?
一律の正解はなく、ISO9001は間隔を組織の判断としています(出典:ISO 9001:2015 7.1.5.2)。温度計はドリフトが出やすいため、使用環境や品質への影響度に応じて短めに設定する組織が多くみられます。過去の校正結果が安定していれば、根拠を残したうえで延長を検討できます。
Q. なぜ温度計は校正周期を短くするのですか?
経時ドリフト、熱衝撃、使用環境(温度変動・多湿・振動)の影響で指示値がずれやすいためです。長さ測定器に比べて狂いやすい前提で、重要度の高い用途ほど周期を短くし、日常点検の頻度を上げるのが実務的な考え方です。
Q. 複数点校正とは何ですか?
使用する温度域の複数の点で校正・確認することです。1点だけの確認では使用域全体の精度は分からないため、実際に測定する温度範囲をカバーする点で確認します。校正の実施そのものは校正事業者やJCSS登録事業者が行い、発注時に確認したい温度点を伝えます。
Q. 恒温槽やデータロガーも校正管理の対象ですか?
監視・記録に使う機器でも、その結果が品質判断に関わるなら管理対象です。品質への影響度で管理ランクを付け、重要なものは校正・点検の対象に含めます。SaaS側では校正証明書の保管・次回校正日・点検記録を機器ごとに管理できます。
出典
- ISO 9001:2015(7.1.5 監視及び測定のための資源): https://www.iso.org/standard/62085.html
- JIS Z 8710:1993 温度測定方法通則: https://kikakurui.com/z8/Z8710-1993-01.html
- OIML D10:2022/ILAC-G24(校正間隔の決定・レビューに関する国際ガイダンス): https://www.oiml.org/en/files/pdf_d/d010-e22.pdf
- 日本品質保証機構(JQA)デジタル温度計の校正: https://www.jqa.jp/service_list/measure/service/temperature_humidity/digital_ondokei.html
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